ディスク面の歪みの影響

ブレーキ性能に影響する、歪みが有っても車検に合格するかも知れません。
このディスク面でも合格するのではと思います。

こちらのディスク面は間違いなく合格です。
ですが、工業力学から算出したブレーキ性能が出るでしょうか。
車検に合格した直後はクリアできても半年後はどうなるか解りません。
或いは、ドライバーのブレーキペダル踏力の差が出て、
「止まれるはずが止まれなかった」ということも有ります。
何故でしょうか。

ディスク面の歪みはブレーキ性能に影響するからです。
ディスクブレーキはパットがディスクを挟んで、
その挟んだ時のパットの押し圧による摩擦力でブレーキがかかる事は皆さんご存じでしょう。
摩擦力は押し圧に比例し、接触面積には影響されないと言われていますが、
実は微妙に違うんです。

1:ブレーキペダルを踏んだ力を油圧に換えます。
2:その油圧をブレーキキャリパー内の油圧シリンダーに送ります。
3:その油圧シリンダー内にピストンが有ります。
4:そのピストンが油圧によりパットを押します。
5:そのパットの押し圧がディスクに加わります。
従って、ピストンの押し圧はペダルの踏み込み圧に比例します。

ピストン出力面=パット面の押し圧は油圧に依るものですから、
何処の面でも同じ油圧が加わります。
ディスク面の凹凸に応じて、部分的に、圧力=押し圧が変化することはありません。
その結果、
「パットとディスクの接触面積*押し圧=パットがディスクを押す力」となり、
これにパットの摩擦係数を乗じるとブレーキ力となります。

写真1:ディスク面に出る歪み模様が写真の様にドーナツ状なら、
回転中にパットとディスクの接触状態が一定なので、
凹凸に応じてディスクが摩耗します。
良いことでは有りませんが、結果的に、
パットとディスクの当たりが出て(ほぼパット面全体がディスクに当たる)、問題ないようです。

写真2:中心側に、ドーナツ状ではない歪み模様が現れています。
この場合、外周側にパットとディスクの安定した接触部があります。
パットとディスクの接触状態は外周側で決まります。
従って、中心側の凹凸部は、1回転する間にパットとディスクの接触状態が変化します。
変化するというのは、外周側と同じか減るということで、増えることはありません。
しかし、外周側が安定して当たっていますので、
ドライバーはこの変化を感じません。
ブレーキの効きが悪くてもこんなものだろうと感じ、無意識にブレーキペダルを強く踏むだけです。

写真3:1回転中に、パットとディスクが当たる部分と当たらない部分が出てきますし、
その部分の面積も大きいので、ブレーキの効きがかなり悪くなります。
多分、ABSが効く範囲までブレーキ力を強くすることはできないでしょう。
最悪、ディスクがパットを押し返すことになります。
ディスクがパットを押し返すと、パットを押しているピストンがシリンダー内のフルードを逆流し、
キックバック(ジャダー)という症状になります。